第160章

心の底から言えば。

島宮奈々未は死にたくなかった。

当たり前だ。

平穏に生きたいと願わない者などいるはずがない。

だが、もう本当に力が残っていなかった。

夏目海人と夏目太郎から、まだ一度もきちんと「ママ」と呼ばれていないことが、ひどく心残りだった。

軍刀が振り下ろされ、奈々未の胸まであと三センチに迫ったその瞬間——キンッ、と鋭い金属音が耳を打った。

女の握っていた軍刀が弾き飛ばされる。冷たい輝きを放つ一本の金の針が軍刀と火花を散らし、針も刀も奈々未の顔のすぐ上を掠めて飛んでいった。

くそっ!

少しでも狙いが逸れていたら、顔を切り裂かれていたところだ。

誰が金の針を投げて救...

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