第161章

彼を知り己を知れば百戦危うからず、とはよく言ったものだ。

恋敵がわざわざ乗り込んで来たというのに。

相手の名前すら知らないなんて、あまりにも不利すぎる。

島宮奈々未の真剣な問いに対し、野呂栞もまた真剣な面持ちでただ一言こう返した。

「知らない」

島宮奈々未は呆れて言葉を失った。

「……」

「あんた、天狼藤原家で一番腕の立つ用心棒じゃなかったの?」

帰り道、野呂栞は島宮奈々未にそう豪語していたのだ。

野呂栞は心外だと言わんばかりに弁明した。

「あたしは戦闘特化の武闘派なんだよ。情報収集なんて管轄外。おじさんのところは、その辺の役割分担がきっちりしてるの。それにさ、あたしが受...

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