第28章

天瀬美和子の声が震えていた。かすかに泣き声が混じっている。

彼女も予想していなかった。事態がここまで進展するとは。

元々は、島宮奈々未が思うままに操れる捨て駒だと思っていたのに、まさか彼女が木下逸夫という大木に縋るとは。

島宮徳安は勢いよく顔を上げた。目に一筋の冷酷な光が走る。

「どうする?どうするって言われても!」

「木下家という道はもう閉ざされた。別の活路を見出すしかない!」

傍らにいた島宮雪乃が歯を食いしばって言った。「お父さん、お母さん、羽沢家にお願いしてみたら?」

「羽沢家?」

島宮徳安と天瀬美和子は目を合わせ、新たな希望を見出したかのようだった。

羽沢家も雲市で...

ログインして続きを読む