第29章

島宮奈々未の心の中は、複雑な感情が入り混じっていた。

彼女は渡辺芳美の熱意にどう応えればいいのか分からなかった。

「おばさま、ご安心ください。私、がんばります」

結局、島宮奈々未はそう言うしかなかった。

渡辺芳美は満足げに頷くと、もう少し島宮奈々未と話をしてから帰っていった。

島宮奈々未は渡辺芳美を見送ると、部屋に戻り、手首の緑の腕輪を見つめながら考え込んだ。

丹羽光世の母親が、なぜ自分にこんなに優しくしてくれるのだろう?

翌日、島宮奈々未は会社に出勤した。

オフィスに足を踏み入れた途端、何か雰囲気がおかしいと感じた。

同僚たちが変な目で彼女を見て、ひそひそと話している。

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