第50章

島宮奈々未は街をぶらぶらと歩いていた。行き先も決まらないまま。

夜はすでに更けていた。

通りには人影もまばらだった。

島宮奈々未はお腹が空いてきた。パーティーではほとんど何も食べていなかったのだ。

道端に屋台の焼き鳥屋を見つけ、島宮奈々未は腰を下ろして焼き鳥を注文し、ビールを一本頼んだ。

冷たい風が吹き抜け、島宮奈々未は鼻をすすった。木下家の養女が深夜に街をうろついて屋台の焼き鳥を食べているなんて知られたら、さぞかし驚かれるだろう。

島宮奈々未は自分を木下家の養女という身分に縛られたくなかった。束縛されたくない。彼女はあくまでも元の島宮奈々未のままでいたかった。

島宮奈々未は焼...

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