第52章

島宮奈々未は丹羽グループ本社に入社してから、ずっと忙しく過ごしていた。そのうちに丹羽光世のことを頭の片隅に追いやるようになっていた。

この日。

島宮奈々未は報告書を提出して事務所を出たところで、川崎正弘とばったり出くわした。

川崎正弘は川崎映像の若さんで、本社に来て数日経っていたが、島宮奈々未も彼が丹羽グループの副社長を兼任していることを知っていた。

島宮奈々未は川崎正弘を見て、自然と丹羽光世のことを思い出した。

別れてから、二人は連絡を取っていなかった。

島宮奈々未は身を翻して立ち去ろうとしたが、川崎正弘は彼女を見つけて「島宮さん」と呼び止めた。

島宮奈々未は足を止めざるを得...

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