第89章

島宮奈々未が姫代という名を聞いたのは、それが初めてだった。

丹羽光世が過去に恋愛で傷を負っていた?

その事実を、島宮奈々未は本当に知らなかった。

あの丹羽光世を半年も立ち直れなくさせたのだ。姫代という女は、彼にとって余程特別な存在だったに違いない。

島宮奈々未も馬鹿ではない。丹羽邦義の意図はだいたい読めていた。

「丹羽副社長も冗談がお上手ですね。この世にどれほど似ている二人がいようと、それは全く別の人間です」

島宮奈々未は卑屈になることも傲慢になることもなく、淡々と言い放った。

「世界に島宮奈々未は私ただ一人しかいません」

丹羽邦義は一瞬呆気にとられ、そして笑みを浮かべた。そ...

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