第107章

田中友里子が電話を受けたのは、ちょうど田中父の相手をしている最中だった。二人で会えるのは久しぶりで、甘い時間のはずなのに──加藤柚奈のこととなると、正直うんざりする。けれど息子のことを思えば、放ってもおけない。

田中父の不機嫌そうな顔色を横目に、友里子はスマホを手にバルコニーへ出た。

「泣くの、やめなさい。今あなたが考えるべきは、田中尚哉の心をつなぎ止めることよ。私のところでめそめそしたって、何の役にも立たないわ」

加藤柚奈は唇を噛み、悔しさを滲ませた声で言う。

「でも、どうしたらいいか分からないんです……。尚哉さん、大島莉理のこと……まだ引きずってて。私だって、どうしようもなくて…...

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