第219章

田中辰哉は、大島莉理がどこか上の空なのに気づいた。悟られぬようグラスを取り、ひと口だけワインを含む。

「さっき、誰かに絡まれてた?」

「ううん、別に」

莉理はきょとんと目を瞬かせた。どうしてそんなことを。――さっきの様子を、見られていたのだろうか。

辰哉は彼女の顔をあらためて見て言う。

「誰かが近づいて、君に話しかけてるのが見えた」

その一言で、莉理の表情に迷いが差した。

「彼女が……」

「ん?」

言いたいのに言いづらい。そんな顔。莉理がこんなふうに言葉を詰まらせるのは珍しい。辰哉は少しだけ興味をそそられる。

「話したくないなら、無理にとは言わない」

「大したことじゃな...

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