第91章

飛行機を降りるなり、大島莉理はまずユンチー・ベイへ戻った。外がどれほど静かでも、この街への未練だけは消えない。

胸を締めつける人や出来事が、いくらでも転がっている街なのに。

それから三十分後。空港に一機、到着便が滑り込む。

田中尚哉が到着ロビーを出ると、秘書が小走りでついてきた。

「三十分後に会議が入っております。それから二時間後、義和の社長との——」

「全部、切れ」

秘書が言葉を失う。

義和の社長との面会も会議も、一週間前から押さえていたものだ。尚哉が急に「出張だ」と言い出したせいで一度ずらし、ようやく今日——それを、また?

車はすぐそこまで来ていた。田中尚哉は乗り込み、冷...

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