第96章

彼の顔色が、瞬く間に死人のように白くなった。――録音していたのか。

一番混乱していたはずの瞬間ですら、彼女は冷静さを失わなかった。倒すための証拠を、淡々と拾い集めるために。

鈴木薫が頃合いを見て口を開く。

「田中さん。この録音は、大島さんとの婚姻関係が継続している期間中に、第三者と“友人”の域を超えた関係を持ち、さらに婚約を口にした事実を裏づけるものです。極めて不利になります」

淡々とした声。けれど言葉の刃は鋭い。

「万が一、これがメディアに漏れれば、田中グループの株価と信用への打撃は――田中さんお一人のご意思で背負える範囲では済まないでしょう。私の依頼人が協議離婚を望むのは、互い...

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