第98章

大島莉理の声は氷みたいに冷たかった。

「私が好きなのは、自分の子よ」

その瞳は鏡だ。醜さも、嘘も、ぜんぶ映してしまう鏡。田中尚哉は正面から見返せず、視線を泳がせた先で、ローテーブルの上に古いアルバムを見つける。反射的にそれを掴み、最初のページを開いた。

結婚した日の写真だった。大島莉理はシンプルな白いワンピースを着て、かすみ草の小さな花束を抱え、カメラに向かって眉をやわらかく弓なりにして笑っている。彼は普通のスーツ姿で彼女の肩を抱き、少年らしい意気をそのまま顔に乗せていた。

「覚えてるか……?」

田中尚哉の声は掠れていた。

「あの頃、俺たち金なんてなくてさ。式も、友だち数人呼んだ...

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