第1章

居酒屋の個室は、焼き鳥とビールの香りで満ちていた。私たち友人一同はテーブルを囲み、酒を酌み交わしながら談笑していた。

いつも通りの金曜の集まりだったが、誰かが結婚の話題を口にするまでは。

「悠君、彩里にプロポーズするんだって?」

友人が笑いながら尋ね、その視線が私と神森悠の間を行き来する。

私の心臓が、一拍跳ねた。

プロポーズ? 初耳だ。

神森悠は座席に斜めに寄りかかり、片腕を無造作に私の背後の椅子の背もたれに乗せ、見慣れた、どこか自惚れた笑みを浮かべた。

「プロポーズなんて必要か?」

彼はビールを一口飲む。

「彩里が俺以外と結婚するわけないだろ」

友人たちがどっと笑い、私もそれに合わせて笑った。けれど、その笑顔はどこかぎこちなかった。

十年の付き合いだ。彼は私がずっとそばにいることを、一度も疑ったことがないらしい。

その自信は私を感動させると同時に、かすかな不安を覚えさせた。

「その時は寿美子にブライズメイドを頼もう」

神森悠は続ける。

「あいつ、ずいぶん前から俺に頼み込んでたんだ」

私の笑顔が顔に張り付いた。

田中寿美子。神森悠の幼馴染で、神森家と親交のある裕福な家庭の娘。

彼らがいつ私の結婚式について話し合ったのか、ましてやブライズメイドの人選という具体的なことまで話が進んでいたなんて、私は知らなかった。

ふと、疑問が頭をよぎる。神森悠の重点は、結婚することなのか、それとも田中寿美子をブライズメイドにすることなのか。

「ブライズメイドはもう決まってるの」

私はグラスを置き、できるだけ平静を装って言った。

「大学の同級生と、昔から約束してたから。誰が結婚しても、他の皆でブライズメイドをやるって」

神森悠は私を一瞥もせず、言い放った。

「じゃあ、もう一人追加すればいい」

「それはちょっと……」

私は不快感を滲ませて言った。

神森悠の表情に、苛立ちの色が浮かぶ。

「寿美子はブライズメイドをやったことがないんだ。あいつの願いを一つくらい叶えてやれないのか?」

友人たちが静まり返り、俯いて酒を飲んだり、目の前の料理に集中するふりをしたりしているのに気づいた。

彼らは私と神森悠の間のこうした口論に慣れっこで、口を挟まないのが一番だと知っているのだ。

「結構よ。私の結婚式は、私が決めたい」

その言葉を口にした時、自分でも少し驚いた。

いつもの私なら妥協する。いつも神森悠が本気で怒る前に折れる。

「俺がどうしてもって言ったら?」

神森悠の声が低くなり、脅すような響きを帯びた。

私は答えず、ただ黙って彼を見つめた。私たちの間で、こうした沈黙は珍しい。普段ならすぐに謝って、場を収めようとする。しかし今日、私は突然このパターンにうんざりしていた。

神森悠の顔色が悪くなる。彼は勢いよく立ち上がり、椅子が床と擦れて耳障りな音を立てた。

「じゃあ別れる! 島尻彩里、もう連絡してくるな」

彼はドアを叩きつけるようにして出ていき、テーブルには気まずさと沈黙だけが残された。

数秒後、友人たちがようやく小声で話し始めた。

「彩里は余裕だね。悠君のことだから、きっとうまくやれるって」

一人の友人が、まるで先ほどの喧嘩がちょっとした茶番だったかのように笑って言った。

「男は甘やかしちゃダメ。甘やかすほどつけあがるんだから。彩里は普段、彼を甘やかしすぎよ!」

別の友人が、励ますような口調で私の肩を叩く。

「後で叔父さんに頼んで、二人のために良い日を選んでもらうよ」

三人目の友人が言った。

「神社の神主さんだから、そういうの詳しいんだ」

彼らはまだ日取りや結婚式の詳細について話し合っている。まるで、神森悠の別れの言葉が茶番の一部で、彼がいつでもドアを開けて戻ってきて、そして私たちは元通り仲直りするかのように。

私はただ微笑むだけで、もう相槌を打たなかった。

今回ばかりは、自分がまだやり直したいのかどうか、確信が持てなかった。

この十年、喧嘩の後はいつも私から謝ってきた。何度も自分を卑下してきた。なのに今日、彼が「俺以外と結婚するわけない」と言った時、私の心に湧き上がったのは甘い気持ちではなく、定義され、枠にはめられたような息苦しさだった。

少し、気分が悪かった。

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