第4章
夜風に乗ってマリーゴールドの香りが漂う中、私は記憶の泡の中に座り、カルロスのやつれた顔を見つめていた。胸が張り裂けそうに痛んだ。
「エレナ、どうしたんだ?」カルロスが心配そうに尋ねた。
私は作り笑いを浮かべた。「なんでもないわ。ただ……あなたのことが心配で」
けれど心の奥深くでは、ある声が叫んでいた。忘れられたくない一心でがむしゃらに成功を追い求めてきたのに、私はこの手で、最も愛する人を殺してしまうのかもしれない……と。
記憶の泡が消え去った後、私は落ち着かない気持ちでいた。翌日、花びらの橋を通じて、自らカルロスの霊媒師の師匠について問い合わせた。
返信の中で、カルロスはさらに詳しいことを明かしてくれた。「エレナ、アントニオが言うには、次元間の繋がりは一度ごとに私の生命エネルギーを消耗させるんだって……。危険だって警告されたけど、君を助けることより大事なものなんてないって伝えたんだ。友人のルーシーも私のことを心配してるって言ってたけど、説明してる時間もなくて……」
私の手は震え始めた。やはり本当だったのだ――私がマリーゴールドの花弁を通じて品物を転送するたび、記憶の泡の中で彼に会うたび、もっと多くの商品を要求するたび、私は彼の命を削っていたのだ。
冥界の法則は残酷だ――ただで手に入るものなど何もない。
私の渇望、私の欲求、私の強欲――そのすべてが、この繋がりを通じて彼の生命力を吸収していた。最も恐ろしい皮肉は、カルロスに忘れられるのを避けるために必死で成功を追い求めていた私が、彼が私を忘れる前に、彼を殺してしまうかもしれないということだった。
私は、自分が最も軽蔑していた人間そのものになってしまっていた。
その夜、私は店に一人で座り、商品で埋め尽くされた部屋と、その日の莫大な利益を眺めていた。すべてを止め、カルロスとの繋がりを断ち切り、彼にまっとうな人生を送らせるべきだとわかっていた。
でも、私にはできなかった。
それは悪循環だった。生き残るためには成功を維持しなければならない。成功するためにはカルロスを消耗させなければならない。だが、もしカルロスが死んでしまえば、どのみち私は忘れられてしまうのだ。
現世で、他人を傷つけていると知りながらも止められない人々を思った。かつて私は彼らを軽蔑していたが、今や私もその一人になっていた。
さらに恐ろしいことに、私は自分が何をしているかを正確に理解していながら、続けることを選んでいた。生きるためだと自分に言い聞かせたが、心の底では、権力と成功がもたらす陶酔感をも楽しんでいた。
天井を見上げると、生まれて初めて、私の眼窩の緑の輝きが翳った。ようやく理解した――私にはこれを止める力がないのではなかった。止めたくなかったのだ。
外からは骸骨たちの夜の歌が聞こえてきたが、今夜のその歌は葬送歌のように響いた。自分が築き上げた成功という玉座に座りながら、私は初めて本当の恐怖を感じた。
一つの事実を認めるのが恐ろしかった。自分の生存のために、私はカルロスが死ぬことを厭わないでいる。
そして最も悲劇的なのは、たとえカルロスが死んだとしても、死者は誰も覚えていないのだから、結局は私も忘れられてしまうということだった。
答えが必要だった。
成功の味は口の中で苦くなり、記憶片コインは目の前で輝きを失った。私は立ち上がり、店の扉を押し開けると、夜風が骸骨の身体を吹き抜けていくのを感じた。
遠くで鐘の音が鳴り響き、その音色は物悲しくも荘厳だった。見上げると、冥界の大聖堂の尖塔が、月光を浴びて神聖な青い光を放っていた。
「もしかしたら……あの場所なら、答えをくれるかもしれない」
教会の内部は想像していたよりも暗かったが、それ以上に平穏だった。天井からはマリーゴールドの花びらが雪のように舞い落ち、蝋燭の炎が揺らめいては、ステンドグラスの窓に色とりどりの影を落としている。ここには私の店のような喧騒はなく――ただ、奥深い静寂があるだけだった。
深呼吸をすると、胸の中で渦巻いていた罪悪感がいくらか和らぐのを感じた。
その時、隅の方に座っている人影に気がついた。
男の骸骨が一人、後列の席に座っていた。頭蓋骨をわずかにうなだれ、その骨格に刻まれた深い青と金の模様が、蝋燭の光に照らされてきらめいている。きっちりとした黒いスーツを身にまとい、膝の上にはつばの広い帽子が置かれていた。その全身からは、深い憂愁が漂っていた。
私は静かに近づいた。
「もし、あなたはいつもここに一人で座っているのですか?」
男が顔を上げると、その眼窩は憂いを帯びた青い光で輝いていた。顔には複雑な金の模様が施されていたが、その表情には尽きせぬ悲しみが宿っていた。
「私はガブリエル・サンチェス」彼の声は深く、穏やかだった。「ここで記憶を守っている」
「記憶を守る?」私は彼の隣に座り、好奇心をかき立てられた。
ガブリエルは祭壇の前に広がるマリーゴールドの海を見つめ、ため息をついた。「忘れられた記憶を守っている。特に……娘の記憶を」
私の胸が締め付けられた。この男の瞳に宿る痛み、愛する者を失った絶望――私はそれを痛いほど知っていた。
「家族を失うのは辛いことでしょう」私はそっと言った。「私も事故で死んだので、その……突然の別れという気持ちはわかります」
ガブリエルは向き直り、私を注意深く観察した。
「君は特別だ」彼はゆっくりと話し始めた。「ほとんどの新しい魂は、ここの生活に溶け込もうと急ぐものだが、君は……その瞳に、言葉では言い表せない重みを宿している」
私は苦笑した。「後悔を残して死んだからかもしれません。自分の死には、もっと深い意味があったはずだと、いつも感じているんです」
「意味……」ガブリエルはその言葉を繰り返した。「娘の死に――私は未だに何の意味も見いだせないでいる」
彼の声が震え始めた。「娘は浜辺で溺れ……私は死ぬ間際まで、彼女を助けることができなかった。父親として、私は完全な失敗者だ」
私の心臓が、突然激しく鼓動した。溺れた? 浜辺? 恐ろしい予感が胸をよぎった。
「私も浜辺で溺れました」私は探るように言った。「もっとも、私は小さな女の子を助けたのですが」
ガブリエルの眼窩が、まるで稲妻に打たれたかのように、突如青い光を放った。
「溺れた? 女の子? いつだ? どこでだ?」
彼の声は震えるほど切迫しており、身体を私の方へねじ向け、骸骨の手で私の肩を強く掴んだ。
私は、かつてないほどの緊張を感じた。
「三ヶ月前……K市の浜辺で……八歳くらいの、髪を三つ編みにした、ウミガメのネックレスをつけた女の子……」
私の一言一言が、大槌のようにガブリエルの心を打ち砕いていった。
ガブリエルの眼窩は激しく点滅する青い光で燃え上がり、その全身が震えていた。
「なんてことだ……それは私のソフィアだ! 君が……君が私の娘の命を救ったのか?」
教会の中のマリーゴールドの花弁が、まるで運命そのものがこの信じがたい偶然に応えるかのように、突如として乱舞した。蝋燭の炎は劇的に跳ね上がり、ステンドグラスの光と影は一層鮮やかになった。
私は完全に凍りつき、眼窩の緑の光が爆発しそうになった。
「ありえない……偶然にしては出来すぎている……あの子のお父さん? ウミガメのネックレス?」
「そうだ! そうだ!」ガブリエルは興奮して立ち上がり、帽子を落としそうになった。「あのネックレスは、私からの誕生日プレゼントだったんだ! 君は娘の命の恩人だ!」
あの午後の光景が、私の脳裏を駆け巡った。波間でもがく小さな女の子、身の危険も顧みずに飛び込んだ私、最後の瞬間に女の子を浜辺の安全な場所へと押しやったこと……。
「では……私の死は……本当に一つの命を救っていたのですね」私の声は詰まった。「そしてその命が……あなたの娘さんだったとは」
ガブリエルの瞳に涙が浮かんだ。「ソフィアが私にとってどれほどの意味を持つか、君にはわからないだろう。妻を早くに亡くした後、彼女は私が生きる唯一の理由だった。君が彼女を救った……君は私の全世界を救ってくれたんだ」
胸の光がかつてないほど明るくなるのを感じた。今まで経験したことのない満足感が、私の全身を満たしていく。
「そうか……私の死には、本当に意味があったんだ」
だがすぐに、私は一つの問題に気づいた。
「でも、ソフィアが無事なら、どうしてあなたは……?」
ガブリエルの表情が、突如として暗くなった。瞳の光が、危険な色を帯びる。
「なぜなら、彼女を救った人間が死んだ後、彼女の遺産を狙っていた者たちが……復讐に戻ってきたからだ」
