第10章

沈川澪の沈黙は、藤原司の目には暗黙の妥協にしか映らなかった。

神崎湊のことでくすぶっていた無名な苛立ちは少し落ち着き、代わりに手綱を握り直したような支配感が胸を満たした。結局のところ、彼女は藤原家を、そしてお祖母様を手放せないのだと彼は思った。

夜。本邸の寝室には、オレンジがかったベッドサイドのランプだけが点いていた。

シャワーを終えた沈川澪がベッドの脇を通り過ぎ、ソファでやり過ごそうとした矢先、背後から温かい体温が密着してきた。

藤原司が後ろから彼女を抱きすくめ、肩口に顎を乗せる。その呼吸からは入浴後の爽やかな香りがしたが、それでも彼に染みついた、彼女を不安にさせる見知らぬ匂いは隠...

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