第12章

桐谷景陽は藤原雅臣の有無を言わせぬ一言にその場に縫い留められ、沈川澪が去っていくのをただ見送るしかなかった。

藤原雅臣は彼女のために車のドアを開けた。この上なく紳士的な振る舞いだった。

沈川澪は無意識に後部座席へ向かおうとした。そこは彼女にとっての定位置であり、安全で、他者と距離を置き、自分を隠すことができる場所だったからだ。

「前に乗りなさい」

藤原雅臣の声が響く。決して声を荒らげたわけではないが、有無を言わせぬ静かな重みがあった。

沈川澪は足を止め、彼の深い眼差しと視線を交わすと、結局は言われた通りに助手席へ乗り込んだ。

ドアが閉まり、外の喧騒と桐谷景陽の探るような視線が遮断...

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