第48章

沈川澪は背を向けた。この吐き気を催すような煙草の匂いから、ただ逃げ出したかった。

だが、一歩踏み出した瞬間、手首を乱暴な力で掴まれ、体ごと激しく引き戻された。

藤原司はそのまま彼女を抱き寄せ、腕の中にきつく閉じ込めた。

「藤原司、離して!」沈川澪は身をよじった。その拍子に腕の火傷が引きつり、痛みに息を呑む。額にはじわりと冷や汗が滲んだ。

藤原司は彼女の苦痛など気づかないかのように顔を伏せ、生温かく濁った息をその首筋に吹きかけた。嘲るような声が耳を打つ。

「どうした? 神崎湊はよくて、俺は触っちゃ駄目なのか」

沈川澪は顔を背け、その攻撃的な視線を避けた。氷のように冷たい声で言い放つ...

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