第54章

藤原司の指が彼女の手首に食い込む。その華奢な骨を砕いてしまいそうなほどの強い力だった。

沈川澪の何の感情も浮かばない瞳を覗き込む彼の眼差しには、暴力的な怒りと嘲笑が入り混じっていた。

「離婚だと? 沈川澪、忘れたのか。そもそもこの結婚はお前が泣きついてきたんだろうが。それを今度は別れたいだと? 藤原家を何だと思っている。自分の都合で勝手に出入りできる場所だとでも思っているのか」

彼が皮肉げに笑う。その低く耳障りな笑い声には、見下すような傲慢さが滲んでいた。

ふいに手が離され、彼女はボロ布のように投げ出された。藤原司は踵を返し、大股で自室へ戻ると、乱暴に扉を閉めた。

よろめいて後ずさ...

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