第56章

息が詰まるような沈黙を破り、唐突にけたたましい着信音が鳴り響いた。

静まり返ったスイートルームで、その音はひどく耳障りだった。だが、画面に『朝倉月乃』の文字が点滅するのを見た瞬間、沈川澪の胸の奥には奇妙な安堵が広がっていた。

藤原司は画面を一瞥し、眉間の皺をさらに深くした。

彼は沈川澪を避けることなく、彼女の目の前で通話を取った。

『司、まだ仕事終わらないの? 私ね……』朝倉月乃の声は少しすねたようで、受話口越しでも、計算されたようなか弱さが伝わってくる。

藤原司はそれを聞きながら、淡々とした視線を沈川澪へ向けた。そして、苛立ちを滲ませた低い声で言う。

「私用を取り込んでいる。用...

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