第5章

星奈に、私の元いた部屋はすっかり乗っ取られてしまった。かつて思い出の写真をびっしり貼っていたコルクボードがあった場所には、趣味の悪いボヘミアン調のタペストリーが飾られている。あちこちに大小様々な観葉植物が置かれ、部屋中にユーカリの香りを振りまくディフューザーまで鎮座していた。

まるで自分の家の中にあるゲストハウスで、一人シリアルを食べているような気分だった。

「それでね、私、海洋生物学を専攻しようかなって考えてるんだ」

朝食の席で、星奈がお父さんにそう切り出した。

「海もここから近いし、ちょうどいいかなって」

「最高じゃないか!」

お母さんは、満面の笑みで手を叩いた。

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