第12章 誰もが元気だが、彼女だけは長く生きられない

秋月雫(あきづき しずく)は、小さくくしゃみをした。

 手元に残った僅かな蓄えを計算し、彼女が選んだのは環境のあまり良くないビジネスホテルだった。

 部屋の空気には微かなカビと埃の臭いが漂っている。唯一の美点は、宿泊費の安さだけだ。

 手持ちの金は底をつきかけているが、これからの治療費のために少しでも残しておかなければならない。

 癌を患いながら生き延びられる確率は低いと分かっている。それでも人間には生への執着がある。秋月雫もまた、このまま治療を諦めたくはなかった。

 ベッドに一人腰を下ろし、秋月雫は高杉蓮(たかすぎ れん)に電話をかけるべきか迷っていた。

 皆に追い出された後、...

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