第160章 あなたたちも子供を送りに来たのか?

秋月雫の体が強張った。

 三年間法律を学んだ彼女にとって、『離婚協議書』が単なる紙切れに過ぎず、法的な効力を持たないことなど常識だった。

 ただ、自分が死を偽装して姿を消せば、婚姻関係も自然と解消されるだろうと高を括っていたのだ。

 それに、九条時夜が白川ゆらと結婚すれば、過去の婚姻など誰も口にしなくなるはずだった。

 まさか、こんなことになるとは……。

 数秒の沈黙の後、雫は観念したように九条時夜を振り返った。

「九条社長、既婚者のままで他の方と婚約されたわけですし、やっぱりスキャンダルになるのが心配ですか?」

「ああ」

 彼は短く肯定し、雫の目の前まで歩み寄ると、その瞳を...

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