第168章 怒った

秋月雫は目を細めた。

 視線を上げ、白川ゆらを捉えると、口元だけで冷ややかな笑みを浮かべる。

「白川さん、ちょうどよかった。九条社長のところまで案内してくれませんか?」

「時夜に会うつもり?」

 白川ゆらの顔に明らかな不安が走り、瞳の奥に怒りと驚愕が交差する。

 だが、彼女が声を荒らげるより先に、雫が口を開いた。

「ええ。白川さんは優しくて寛大な方だと評判でしょう? まさか私を見捨てるわけないわよね。それに私たち、旧知の仲じゃない。これくらいのお願い、聞いてもらえるわよね?」

 外面が良い白川ゆらは、人前では常に善解人意で、誰にでも救いの手を差し伸べる聖女のような存在だ。まして...

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