第179章 彼女に誤解させないで

総務部全体がこちらの様子を窺っていた。その柔らかな声を聞き、誰もが目配せを交わす。

――やはり、白川ゆらのためだったか、と。

 加賀和成の反応はさらに露骨だった。

「なるほどな。九条社長にあれだけ嫌われているお前が、なんで残留できたのか不思議だったんだ」

 秋月雫は席に座ったまま、白川ゆらに微笑みかけた。

 その淡い笑み。だが、それだけで白川ゆらは、自分の心中がすべて見透かされたような錯覚に陥った。

 保温ジャーを握る指に力がこもる。再び口を開いた時、その声はわずかに強張っていた。

「加賀さん、そんな言い方はやめて。秋月さんは私と時夜の旧知の仲なのよ。少しは配慮してあげないと」...

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