第187章 九条時夜を彼女に返せ

秋月雫は一瞬きょとんとしたが、すぐに気づいた。緒方ハルが凝視しているのは、手首の赤い組紐──その先に揺れるペンダントトップだということに。

 それは施設の「マザー」から託されたものであり、彼女の出自を証明する唯一の手がかりだった。

 だが、大海原で針を探すようなもので、これまで何の手がかりも掴めていなかった。

 それが、今……。

「このペンダントに見覚えが?」

 秋月雫は手を上げ、緒方ハルの目の前でそれを揺らしてみせた。

 しかし、人を安易に信じてはいけない。ましてや相手は、あの白川ゆらの母親なのだ。

 だから彼女はペンダントの出所を明かさず、逆に緒方ハルが何を知っているのかを...

ログインして続きを読む