第291章 扉を開ける

 どんな理由があろうとも、受けた傷が本物であることに変わりはない。

 成田博司がその真意を悟ったとき、秋月雫を見つめる眼差しは複雑に揺れ動いた。

「なぜ彼が、君の心にはもう俺がいないと言ったのか……ようやく分かったよ」

「何の話?」

「君は理性的すぎる」

 本当に相手を想っているのなら、ここまで冷静でいられるはずがない。

 秋月雫は皮肉げに唇を歪めた。

「私を傷つけておいて、笑って水に流せとでも言うつもり? 私がそんなにお人好しに見えるの」

 彼は何か言いたげに唇を震わせたが、結局言葉は出てこなかった。

 無理もない。他者を傷つけた人間に、許しを乞う資格などあるはずがないの...

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