第295章 あなたを身代わりにしたことはない

九条時夜は唇を微かに震わせただけで、何も言葉を発しなかった。

 その言葉を濁すような態度は、どう見ても後ろめたさを抱えている人間のそれだった。

 秋月雫は即座に鼻で笑い、その双眸に冷酷な光を瞬かせた。

 結局のところ、彼は白川ゆらを拒絶できないのだ。

 それなら、なぜ彼女との婚約を破棄したのか。そしてなぜ今、一言も弁明しようとしないのか。

 どうりで、あそこまで露骨に誘導しても、白川ゆらの曖昧な態度について言及した際、彼の反応が一歩遅れたわけだ。

 彼の心の中では、白川ゆらのすることはすべて正しいと決まっているのだ。他人が口を挟む余地など、どこにもない。

「人違いだったんだ!」...

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