第52章 子供が欲しいなら、くれてやる

最善の選択、だと?

 彼は白川ゆらのために私の研究成果を奪ったくせに、さらに原作者である私自身に「私が盗みました」と認めろと言うのか?

 これほど馬鹿げた話が、他にあるだろうか。

 いや、ある。すべての元凶が、自分の夫だという事実だ。

 秋月雫の心は、音を立てて冷え切っていった。たとえ自分が本当に死んだとしても、九条時夜は見向きもしないだろう。

 もし死に際の血が白川ゆらのドレスを汚せば、少しは不快に思ってくれるかもしれないが。

 雫は思わず乾いた笑いを漏らした。目元は赤くなっていたが、彼に何かを訴える気力など残っていなかった。

 その笑い声に、九条時夜は得体の知れない焦燥を覚...

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