第50章

「パァン!」

乾いた平手打ちの音が、化粧室に響き渡る。

尚子は顔を横に弾かれ、目を限界まで見開いていた。

信じられないという顔だ。

「よくも……!」

「何するのよ……!」

葵と尚子の声が同時に上がる。

二人は冷え切った目で晴美を睨みつけた。その視線は毒を塗った刃のようだ。

晴美は手首を軽く回し、赤くなった自分の掌を見つめる。胸の奥が、信じられないほどすっきりしていた。

一発殴っただけで、鬱屈した思いが嘘のように消え去った。

痛快だ。たまらない。

驚愕に固まる二つの顔を眺め、彼女は赤い唇を微かに吊り上げた。

「もう叩いたのに、まだそんなこと聞くの?」

「お祖母ちゃんは...

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