第56章

「お前か」

歯の隙間から絞り出すような声だった。

深い瞳の奥には冷気が渦巻き、あからさまな嫌悪が張り付いている。

まるで汚物でも見るかのような目つきだ。

晴美の心臓がどくりと沈む。弁明の言葉を口にしかけた瞬間、和也が一歩踏み込み、嘲るように言い放った。

「いい度胸だな」

迷いのない響き。完全に彼女の仕業だと決めつけている。

晴美は呆れて鼻で笑った。涼やかな瞳で、怯むことなく男を見据える。

「お褒めに預かり光栄ね。でも不思議なんだけど、どうして私の仕業だって断言できるの?」

「違うとでも言うのか」

和也は彼女の腕を乱暴に掴み、ギリギリと指の力を強めた。骨を砕かんばかりの強さ...

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