第六十章

土砂降りの雨が降り注ぎ、地面に打ちつける雨粒が激しく水飛沫を上げている。

目の前の光景を麻痺したように見つめ、晴美の心は凪いだ水面のように静まり返っていた。やがて、視線を傍らへと逸らす。

次の瞬間、胃の奥を焼くような痛みが唐突に襲いかかってきた。

痛みに足元がふらつき、よろめいた彼女は、冷たい壁に背中を押し当ててどうにか倒れるのを堪えた。

しばらくして痛みがいくらか和らぎ、顔を上げると――エントランスにはとうに誰の姿もなく、ただ自分一人だけが残されていた。

和也は葵の肩を抱き寄せ、傘を差しかけながら、すでに彼女を車へとエスコートしていた。

あまりにも露骨な特別扱い。

傘は葵の方...

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