第20話

春がドアを閉めると、葵は再びデスクに向かった。

キーボードに指を落とし、『暗号化された自由』の第四段落を二行ほど打ち込んだところで、窓ガラス越しに下の階の喧騒が伝わってきた。くぐもってはいるが、一向に止む気配はない。

彼女は窓際へ視線を向けなかった。

二十分後、悠の声明がNexusの公式サイトと三つのメディアプラットフォームを通じて一斉に発表された。さらに三十分後、春から報告が入った。下の階に群がっていた記者たちは大半が散り、車が一台だけ残っているという。

「放っておいて。ドアを閉めて作業を続けて」

葵は技術ブログを書き上げ、全体に目を通してから、余分な背景説明を二段落削って公開し...

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