第26章

葵がドアに手を掛けた瞬間、突然、胃の奥が激しく収縮した。

明け方の痛みよりも、はるかに強烈だ。

ドア枠にすがりつき、身を屈めると、口の中に鉄錆の匂いが込み上げてきた。

喉から漏れそうになる呻き声を、唇を強く噛み締めて必死に殺す。

オフィスの外にはまだ人がいる。春ともう一人のエンジニアがコードについて議論している声が聞こえる。

痛みは一分近く続いた。

唇から血が滲む。胃から吐いた血ではない。自分で噛み破ったのだ。

上体を起こし、ティッシュで口元を拭うと、それを手のひらに固く握り込んだ。

深呼吸。

もう一度、深呼吸。

ドアを押し開けて外へ出る。ワークスペースを通り過ぎる彼女の...

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