第44章

洗面台の蛇口は完全に閉まりきっておらず、水滴が一つ、シンクに落ちて微かな音を立てた。

葵はぽつりと口を開いた。

「関野さん」

「なんだ」

「二週間、つまり14日間。私にはどうしてもこの14日間が必要なの」

電話の向こうからは何も聞こえない。

葵は言葉を継いだ。

「毎日経口で鉄剤を飲んで補血する。立ち上がる時は必ずゆっくり動くし、3時間おきに鉄剤を飲む。もし持続的なめまいや動悸がひどくなったら、すぐにタクシーを呼んで病院に行くから」

「経口鉄剤だと? ふざけるな」

圭治の声には、今にも爆発しそうな怒りを無理やり押さえ込んでいる響きがあった。

「君のヘモグロビン値はたったの6...

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