第53章

電話越しの裕夫は、明らかに異変を察知していた。

「藤原さん、何かあったんですか」

「彼女が失踪した」

裕夫は少し間を置いてから尋ねた。

「水原さんの駐車場の件と関係が?」

和也は答えなかった。

「すぐに調べます」

和也は通話を切り、ジャケットを手に取って外へ向かった。

秘書が慌てて後を追う。

「藤原さん、どちらへ?」

「葵を捜す」

「ですが、彼女は病院にいる可能性が――」

和也の足がピタリと止まった。

病院。

先ほどの電話越しの声は、いつもより弱々しかった。

あの時は怒りを抑えることに必死で、深く考えていなかった。

今思い返せば、明らかにおかしかった。

彼女...

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