第57章

午前零時三十分。

Y市旧民政公文書館の外、街角に一台の黒い車が停まっていた。

雨は降っていないが、風がひどく冷たい。

旧公文書館はとうの昔に閉鎖され、建物はくすんで古びている。入り口の看板は半分剥がれ落ち、壁際の監視カメラに赤いランプは点灯していない。

葵は車内で、春から無理やり着せられた上着を羽織って座っていた。顔に血の気はないが、その眼差しは揺るぎない。

運転席の春が口を開く。

「もう一度言う。お前は来るべきじゃなかった」

「それ、もう七回目よ」

「お前が七回とも聞いてないってことだろ」

葵は公文書館を見つめたまま答える。

「一人で来たわけじゃないわ」

春は鼻で笑っ...

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