第59章

電話の向こう側は数秒間、沈黙に包まれた。

武治はそれ以上何も言わず、通話を切ってスマホを机に置いた。

傍らに立つ奈央は、ショールを握りしめる指を震わせ、声を上ずらせた。

「武治、あの子、本当に何か握ってるの?」

武治は視線を上げて彼女を見た。

「慌てるな」

奈央の唇は青ざめている。

「あの子はもう、昔みたいに何でも我慢する小娘じゃないわ。藤原家相手にだって牙を剥いたのよ、水原家だって……」

「水原家に噛みつくなら、まずは自分の身を切り裂く覚悟が必要だ」

武治の口調は淡々としていた。再び湯呑みを手に取り、蓋を縁で軽く鳴らす。

「自分の出自すら知らない人間が、どうやって私と闘...

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