第29章

 今朝の新聞の芸能欄一面には、俺と、顔のはっきりしない女が口づけを交わしている写真が、でかでかと載っていた。

 女の顔はうまく写っていない。だが俺の顔だけは、嫌になるほど鮮明に抜かれている。

 しかもその一枚が切り取っていたのは、まるで俺がその女と離れがたいほど激しく唇を重ねている――そんな瞬間だった。

 頭の中が、どんと音を立ててぐしゃぐしゃになる。

 写真に写っていたのは、昨夜、空野朱音が俺をパパラッチの目から隠そうとして、車の中で無理やり押さえつけたときの場面だ。

 あのとき俺は、ひとりの記者が近づいてくる気配に気づいた。だが空野朱音は、ためらいもなく俺の顔を押し下げた。

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