第44章

 男のモデルは、私の唇に指を当て、黙れと合図した。

 私はきつい視線で目の前の男を睨みつける。声は潜めたまま、詰問した。

『森原覚……どうしてあの人が来るの? なんで私をこんな場所に連れてきたのよ』

 男は少し気まずそうに肩をすくめた。

『この部屋、普段は森原覚の専用みたいなものなんです。でも、あの人めったに来ないんで……今日来るなんて、俺も知らなくて』

『頼むから声を出さないでください。あの人に聞かれたら、うちの店長に俺、確実にクビにされます』

 彼が怯えきっているのは見ればわかった。けれど、落ち着かないのは私だって同じだった。

 黙れと釘を刺されなくても、そんなの口なんて利...

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