第65章

 会議室のドアを開けると、赤村様は中のソファに座っていた。いかにも退屈そうな顔をしていたくせに、そこへ私の姿が視界に入った瞬間、ぱっと目の色を変えた。

 ――嫌な予感がする。

 それでも私は気持ちを整え、愛想のいい営業用の笑みを作って、赤村様に挨拶した。

「赤村様、はじめまして。設計会社の宮沢詩音です。先日はお電話で失礼いたしました」

 私は手を差し出した。あくまで礼儀として、軽く握手をするつもりだった。

 けれど赤村様は、私の手を取る前に、傍に立っていた秘書へちらりと目配せをした。秘書の男は無言で部屋を出ていき、その際、きっちりとドアまで閉めていった。

 胸の奥がひやりと冷える...

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