第2章

幸村椿視点

夜は深く、部屋に響くのは、幸村真尾が寝返りを打つ音だけだった。

「椿、どうして何も話してくれなかったんだ」

暗闇の中で、彼の声は震えていた。

私はここにいる。

ずっとここにいた。ベッドであなたが苦痛にもがき、ようやく私の不在を悲しみ始めるのを、ずっと見ていた。六ヶ月。幸村真尾。この半年間、あなたは私がどこにいるのかなんて、一度も本気で考えようとはしなかった。

『もっと早く私を気にかけてくれていたら、私は死なずに済んだかもしれないのに……』

そう、私は死んだ。あの雨の夜に死んだ。松園寺の屋根の下で死んだ。助けを求める私の電話を、幸村真尾が一方的に切った瞬間に死んだ。

あの夜の記憶は、私を殺した鉄筋そのもののように、冷たく、無慈悲に私を貫き、すべてが終わったあの瞬間に引き戻す。

六ヶ月前、十一月十五日、夕方。

私は松園寺の前に立ち、嵐で剥がれ落ちた屋根瓦を見上げていた。破損箇所は大きくない。だが、早く修理しなければ、次の雨で雨水が染み込み、寺院の木造内部を傷めてしまうだろう。

「修理代は五十万円」

その金が私たちの家計にとってどれほどの意味を持つか、頭の中で計算した。幸村真尾が失業して三ヶ月。貯金はほとんど底をついていた。

そう、一家の大黒柱は私だった。毎朝六時に起きて清掃会社で働き、午後に帰宅して家事をこなし、夜は寺院の修繕作業にボランティアで参加しなければならなかった。一方の幸村真尾は?家でテレビとゲームに興じ、たまに「仕事を探しに」出かけると言っては、友人たちと酒を飲んで愚痴をこぼすだけ。

それでも、私は彼を愛していた。彼が冷たくなっても、柳崎千早からの電話を頻繁に受けるようになっても、私はまだ彼を愛していた。

柳崎千早。幸村真尾が職を失ったのとほぼ同時期に引っ越してきた隣人。最初はとても親切だった。煮込み料理の差し入れをしたり、幸村真尾に「仕事のチャンス」を紹介すると申し出たり。いつも完璧な笑顔を浮かべ、私が仕事でいない時間帯を狙ったかのように、完璧なタイミングで私たちの家の玄関に現れた。

「私なら直せる」

誰もいない寺院に向かって、私は呟いた。

「五十万円あれば、幸村真尾もお金のことでそこまで思い悩まなくて済む」

馬鹿な決断だった。自分が極度の高所恐怖症であることも、雨上がりの屋根が滑りやすく危険なことも知っていたのに、それでも私は寺院の物置から梯子を引きずり出した。

梯子を一段上るごとに、足が震えた。

「たった十分」と自分に言い聞かせた。

「この瓦を直して、下に降りて、家に帰って幸村真尾の夕食を作るんだ」

雨水と苔、そして落ち葉が混じり合い、一歩踏み出すごとに博打を打っているようだった。私は交換用の瓦を手に、慎重に破損箇所へと移動した。

目的の場所にたどり着こうとした、まさにその時。突然、足が宙を踏んだ。

あの無重力感は、決して忘れられない。

屋根の端から滑り落ちる瞬間の一コマ一コマを、はっきりと覚えている。――まず膝が雨樋にぶつかり、次に胸が寺院の正面玄関の上にある鉄骨の梁に叩きつけられた。

鉄筋が、私を貫いた。

即死ではなかった。ゆっくりと血が流れ出し、ゆっくりと窒息していくのだ。

痛みは筆舌に尽くしがたいものだった。身体が引き裂かれるような感覚。息をするたびに、口から血の泡が溢れた。だが、それ以上に恐ろしかったのは無力感だった。――鉄筋に宙吊りにされ、身動き一つ取れず、ただ死を待つことしかできない。

死ぬかもしれない、と悟った。

震える手で、地面に落ちたスマートフォンに手を伸ばした。画面にはひびが入っていたが、まだ機能した。私は幸村真尾の番号をダイヤルした。――私の唯一の希望、私の夫、私の人生で最も大切な人。

「幸村真尾……」

私の声は、風の中の蝋燭のようにか弱かった。

「助けて……お寺にいるの……鉄筋が、身体を……」

同時刻、町にあるレストラン『楓の家』にて。

そしてあなたは、幸村真尾は、町で一番高価なそのレストランで、柳崎千早と向かい合い、キャンドルライトディナーを楽しんでいた。

私はすべてを見ていた。何か魔法のような超能力があったわけではない。死に至る過程が、私に恐ろしいほどの明晰さをもたらしたのだ。あなたの存在を感じ取り、その瞬間にあなたが何を考えていたかまで、手に取るようにわかった。

幸村真尾は私が買ってあげた一番良いシャツを着て、髪を念入りにセットし、コロンまでつけていた。向かいには、深いVネックの赤いドレスをまとった柳崎千早が座り、その手があなたの腕を優しく撫でている。

「真尾さん、本当に魅力的だわ」

彼女の声は、シロップのように甘ったるい。

「椿さんがいないと、やっとゆっくり話せるわね」

あなたは笑った――私が久しく見ていなかった、あのリラックスした笑顔で。

「ああ、あいつは最近神経質でね。一日中金のことばかり心配してるんだ」

「そろそろ……環境を変えることを考えてみたらどうかしら」

柳崎千早が提案する。

「つまり、男性が希望のない結婚生活に縛られるべきじゃないってことよ」

その時、あなたの電話が鳴った。私からの電話だ。

あなたは発信者表示を一瞥し、その表情は瞬時に苛立ちへと変わった。

電話には出たものの、その口調は氷のように冷たかった。

「椿、大事な商談中なんだ。大げさな芝居はやめろ」

「私……本当に、死んじゃう……」

最後の力を振り絞って、私はその言葉を口にした。

だが、あなたはただ目を丸め、柳崎千早に苦笑いを向けて首を振っただけだった。

「もういい!その芝居、飽きないのか?今夜は帰らないからな!」

そして、あなたは電話を切った。

妻からの最後の助けを求める叫びを、切り捨てたのだ。

「すまない、あいつはいつもこうやって気を引こうとするんだ」

あなたは柳崎千早に言った。

「仕事を失ってから、ヒステリックになって、いつも空が落ちてくるんじゃないかと大騒ぎしてる」

柳崎千早は同情的に頷いた。

「かわいそうね真尾さん。あなたはプレッシャーが大きすぎたのよ。お祝いにシャンパンでも頼みましょうか?あなたの来るべき……自由を祝して?」

あなたはシャンパンを頼んだ。

そして私は、あなたの妻は、寺院の前の鉄筋の上で、ゆっくりと死んでいった。

また雨が降り始め、冷たい滴が私の顔を打った。私は「通話終了」と表示されたスマートフォンの画面を見つめ、傷口から命が少しずつ流れ出ていくのを感じた。

あなたを責めはしなかった、幸村真尾。最後の瞬間でさえ、私はあなたを責めなかった。それが愛の悲劇なのかもしれない。――傷つけられてもなお、傷つけた相手のために言い訳を探してしまう。

『彼は私が本当に怪我をしているなんて知らないんだ』と私は自分に言い聞かせた。

『また私が感情的になっていると思っているだけなんだ』

だが心の奥底では、真実を知っていた。あなたは私が嘘をつかないことも、理由もなく騒ぎ立てたりしないことも知っていた。ただそれを無視することを選び、私が「芝居をしている」と信じることを選んだ。そうすれば、心置きなく柳崎千早とのディナーを続けられるからだ。

血はますます流れ、意識が遠のいていく。須藤葵に電話したかった。私を気にかけてくれる誰かに電話したかった。だが、スマートフォンは私の手から滑り落ち、濡れた地面に叩きつけられて割れた。

私はただそこに、壊れた人形のようにぶら下がり、死が訪れるのを待っていた。

午前三時十五分、私は死んだ。

そしてあなたは、幸村真尾は、翌日の午後になるまで家に帰らなかった。柳崎千早の香水の匂いをまだ身にまとわせて。私たちの寝室が空っぽであることに気づいても、私がまた最近の喧嘩のことで怒っているだけだと思った。――これまで何度も陥ってきた、いつものパターンだと。私が須藤葵の家に泊まりに行ったか、頭を冷やすためにどこかへ行ったのだろうと高を括っていた。

あなたは、私を探そうとはしなかった。

六ヶ月。丸々六ヶ月間、あなたは私のいない人生を楽しんだ。柳崎千早とデートをし、私が保険の貸付で遺した金で遊び、自分にこう言い聞かせた。「いつもの椿だ」――頑固で大げさなのだと。友人たちに私の居場所を尋ねられると、あなたは肩をすくめて「少し距離を置いている」と答えた。

今日まで、あの保険会社からの電話があるまで、あなたは私の行方を「心配」し始めることすらなかった。

愛のためではない。私に会いたかったからでもない。金のためだ。

あの五百万円の支払いには、私の対面での署名が必要だったから。

今あなたは、罪悪感から保険の契約書を握りしめ、このベッドに横たわり、なぜ私がこれらのことを話さなかったのかと私に問いかけている。答えは簡単よ、幸村真尾。あなたは一度も、耳を傾けようとしなかったから。

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