第10章

私は桜浜地方裁判所の外に立ち、高鳴る鼓動を鎮めようとしていた。

一ヶ月。森田刑事が事件を再捜査してから今日の判決まで、一日一日を指折り数えてきた。

「準備はいいかね?」と弁護士が尋ねた。

「ええ」と私は答えた。「やりましょう」

法廷は満員だった。和也と倫子は被告人席に座り、二人とも自分の手元をじっと見つめている。和也はきちんとしたスーツを着て体裁を保とうとしているが、震えているのが見て取れた。倫子はやつれた顔を隠すために厚化粧をしていたが、恐怖心までは隠しきれていなかった。

裁判官が木槌を打ち鳴らした。

「これより証拠調べを行う」

和也が私を殺すと脅迫している録音音声...

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