チャプター 116

ブラッド視点

一度も振り返らずに歩き去っていくエルの後ろ姿から、俺は目を離せなかった。胸が鋭くねじれるような痛みに襲われる。

琥珀色の瞳が、いつもの金色の光を閃かせ、肌の下で内なる狼が落ち着きなくうずいた。すべての本能が、彼女を追いかけろ、と叫んでいた。あるべき場所である俺の腕の中へと引き戻せ、と。体が思わず前のめりになり、筋肉はいつでも動けるように張り詰めていたが、俺はその場に踏みとどまるよう自分に強制した。拳を固く握りしめると、指の関節が白くなった。

『どうしてミラと俺のことを訊かないんだ?』その疑問が、酸のように心を焼き尽くす。『なぜ気にする素振りも見せない? まったく気にならない...

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