チャプター 169

エル視点

マーティン・ブレアとの電話を切った後、気づけば私はブラッドの腕の中で泣きじゃくっていた。

ブラッドの腕に力がこもる。彼の狼人間ならではの温もりが、まるで塗り薬のように肌に染み込んできた。

彼から放たれる守りの本能が波のように伝わってくる。私はその庇護に完全に身を委ね、彼の確かな存在から力を得た。


夕方になる頃には、なんとか気を取り直し、ソフィアに町の広場へと引きずられていった。焼ける肉の食欲をそそる香りが空気に満ち、あたり一帯は満月の祝祭の準備で活気づいていた。

「ほら、エル、もっと気楽にしなきゃ」ソフィアは私の腕に自分の腕を絡め、お祭り騒ぎの中へと引っ張っていく...

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