チャプター 178

エル視点

廊下で立ち尽くす私の目に映ったのは、ブラッドの腰に回されたミラの両腕。その光景に、胸の奥で何かが砕け散る音がした。

ほんの昨日の夜、ブラッドは私のために踊ってくれたのに。あんなにも優しく、情熱的に愛し合ってくれたのに。愛している、と囁いてくれたのに。それなのに、今、彼は――。

「エル」隣から聞こえたアビゲイルの声は、心配で固くなっていた。「行きましょう」

でも、足が動かなかった。ミラが彼にぴったりと寄り添う姿、そのあまりにも自然な様子から、目が離せない。二人は同じウェアウルフ。私には決して理解できない次元で、お互いの世界を分かり合える。ブラッドが私に抱くどんな想いよりも、結局...

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