チャプター 193

エル視点

あの傲慢な船長とのやり取りにまだ腹を立てていたとき、制服を着た二人の乗組員が私たちの釣り場に近づいてくるのに気づいた。ソフィアとアビゲイルが釣り糸から目を上げ、興味津々な表情を浮かべる。

「あの二人、何の用かしら」アビゲイルがリールを少し巻きながら呟いた。

制服から判断するに、一等航海士と二等航海士らしい二人は、真っ直ぐ私の方へ歩いてきた。不安で胃がきりきりと痛む。さっき船長とあんなことがあったばかりだ。これ以上の「特別扱い」なんて御免だった。

「ウェストさん」一等航海士が改まった口調で私に声をかけた。礼儀正しい態度だが、その声の底には私を不安にさせる何かが潜んでいた。「船長...

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