チャプター 206

ブラッド視点

俺は崖の縁に立ち、眼下の岩だらけの海岸に波が砕け散るのを眺めていた。エルへのメッセージを打ち終えると、潮風が肺を満たす。送信ボタンを押す指がためらったのは、ほんの一瞬だった。手配しておいた料理本は、言葉では伝えられない多くのことを物語ってくれるはずだ。

スマホを脇に置き、しばらく身じろぎもせずにいたが、やがて立ち上がって広大な海に向き直った。

「網を閉じる時が来たな」俺は風に向かって静かにつぶやいた。

数分もしないうちにアレックスが隣に現れた。その表情はいつも通り、慎重に無表情を保っている。「サー、ムーンシェイド・ベイから報告です」

俺は振り向かなかった。「報告しろ」

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