第二十六章

エル視点

レイン家の屋敷に着き、車から降りた瞬間、使用人がすぐに厚手のマントを私の肩にかけた。冬の冷気が頬を刺し、頭上に立ち込める雲からは雪の気配が感じられた。

「今年の初雪は、そう遠くないみたいね」

大きくなったお腹を包み込むようにマントをきつく引き寄せながら、私は呟いた。

ブラッドの琥珀色の瞳が私の視線を追って灰色の空を見上げ、その口元に優しい笑みが浮かぶ。「ああ。雪を見るのは好きか?」その声には、私だけに向けられる慈しみの色が滲んでいた。「子供が生まれたら、フロストクローの氷雪世界に連れて行ってやるよ」

私は片眉を上げ、彼の方を振り向いた。「その時になって、約束を破ったりしない...

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