第二十五章

エル視点

ブラッドを突き放すと、突然生まれた私達の間の距離に、二人とも凍り付いた。部屋は息が詰まるような緊張感に満ちている。彼の琥珀色の瞳に傷ついた色がよぎるのが見え、胸に鋭い痛みが走った。でも、私には……。

ブラッドは私から顔を背けた。アルファとしてのプライドを傷つけられ、強靭な体がこわばっている。サイドテーブルへ歩み寄ると、グラスに水を注ぎ、一気に飲み干した。彼が得意とする、冷徹で自制心の強い仮面の後ろに、傷心を隠そうとしているのが見て取れた。

私は深呼吸をして、自分を落ち着かせようと努めた。「話が必要だわ。ちゃんと、話がしたい」

ブラッドは細心の注意を払ってグラスを置くと、口の端...

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