チャプター 59

エル視点

はっと目を覚ますと、頭はぼんやりとしていて、見慣れない天井を瞬きしながら見つめた。一瞬、自分がどこにいるのか思い出せなかったが、すぐにすべてが――屋敷のこと、ブラッドのこと、ここ数週間で起こったすべてのことが、一気に蘇ってきた。

寝返りを打つと、ナイトスタンドの上の目覚まし時計が視界に入った。午前八時十七分。しまった! 私は飛び起き、心臓が激しく脈打った。仕事に遅刻だ。延長休暇のようなものを取ってはいたけれど、普通の生活に――今の私の人生で『普通』と呼べるものが何であれ――戻らなければ。

掛け布団を押しやり、ベッドの端から両脚を降ろす。ひんやりとした空気が肌に触れ、わずかに身震...

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